M11 SEMANTIC QCは、プロトコール、SAP、CRF、データ定義書など複数の臨床試験資料から、解析上重要な意味情報を根拠とともに整理するスキルです。
このスキルはICH M11への準拠性を認定するものではありません。M11とE9(R1)の考え方を、臨床試験の意味情報を整理するための参照枠として使用します。
目的と適用範囲
M11 SEMANTIC QCの目的は、複数資料に分散した解析上重要な意味情報を、文書によって支持された内容、根拠位置、状態、矛盾、R実装への影響へ分解することです。
出力は意味情報を整理するsemantic mapと、その利用可能性を評価するQC summaryに分けます。前者には文書上の事実を、後者にはQC判断、Issue、意思決定事項、AI仮定リスクを記録します。
このスキルは、プロトコール作成、電子交換パッケージ、統制用語パッケージ、規制提出物、正式なSAPレビューを生成するものではありません。
開始条件
複数文書間の意味情報の整理が必要であること、またはM11/電子プロトコールに関連する意味情報レビューが要求されていることが開始条件です。単純な変数一覧または単一のデータ定義からR実装可能性を確認する場合はCONTEXT QCを使用します。
| 入力 | 役割 |
|---|---|
| プロトコール | 目的、デザイン、治療、評価項目の主要な根拠 |
| SAP | 統計手法、解析対象集団、欠測、多重性の根拠 |
| CRF・データ定義 | 評価項目と収集項目・変数の対応 |
| 解析データ仕様 | 解析変数、導出、フラグの対応 |
| 研究者指示・既存QC | 文書外の決定と未解決事項の識別 |
必要資料がない項目は、一般的な臨床試験慣行から補完せず、状態値によって明示します。
使用を推奨する場合
- 重要な情報が複数文書に分散している
- 文書間の不一致を確認したい
- 主要目的とestimandの関係を整理したい
- intercurrent eventとstrategyを整理したい
- 評価項目と元変数を対応させたい
- SAP作成前に試験の意味情報を整理したい
- Rコード作成前に解析上重要な定義を追跡可能にしたい
単純なデータセット、変数一覧、Rコード作成依頼であれば、通常はCONTEXT QCで十分です。
確認に使用する資料
- プロトコールと改訂履歴
- SAPまたはSAPドラフト
- CRF、eCRF completion guideline
- データ定義書、変数一覧、コードリスト
- 解析用データセット仕様書
- 研究者メモ、タスク指示、既存のQC記録
- AIが確認可能なデータの構造・メタデータ
データの値そのものを確認できない場合でも、列名、型、ラベル、値コードなどのメタデータから確認できる範囲を明示します。
根拠ゲート
各情報は、次の順序で扱います。
- 文書またはメタデータに明記されているか
- ファイル名、節、表、変数などの根拠を示せるか
- 複数資料の記載が一致しているか
- 根拠がなければ、未確認または欠落として記録する
- AIの提案は、文書上の事実と分ける
文書にない治療群コード、解析対象集団、評価時点、欠測処理、intercurrent event strategyなどを推測で確定しません。
Evidenceには、少なくとも資料名と識別可能な位置を含めます。利用可能であれば版、日付、節、表、ページ、変数名を記録します。同じ項目を複数資料が支持する場合は、それぞれの根拠を列挙します。
候補解釈はDocument-supported contentへ記入せず、QC summaryのIssues requiring attentionへ候補であることを明示して記録します。
分析上重要な14項目
1. Primary Objective(s) and Associated Estimand(s)
主要目的の文言、対応する臨床的問い、関連付けられたestimandを根拠位置とともに記録します。目的とestimandの対応が明記されていない場合は、対応を推定しません。
3. Treatment
比較する治療条件、投与量、投与経路、投与期間、併用・救済治療を記録します。estimand上のtreatment condition、無作為化群、実治療、データ上の治療群コードを区別します。
5. Population-Level Summary
群間差、比、ハザード比、平均値などのpopulation-level
summaryと比較方向を記録します。統計手法だけが記載され、要約量が特定できない場合はUnclearとします。
6. Description of Intercurrent Event
治療中止、救済治療、死亡などについて、事象の定義、発生時点、評価の解釈または存在への影響を記録します。一般的に起こり得る事象を、試験固有のintercurrent eventとして追加しません。
7. Intercurrent Event Strategy
各intercurrent eventに対して、文書に支持されたtreatment policy、hypothetical、composite、while-on-treatment、principal stratumなどのstrategyを対応付けます。根拠がなければstrategyを割り当てません。
10. Handling of Data in Relation to Primary Estimand(s)
測定値、評価時点、治療中止後データ、救済治療後データなどを主要estimandに対して採用、除外、導出または打ち切る規則を記録します。
Semantic mapの状態値
各項目について、内容と根拠を分け、主に次の状態を付けます。
| 状態 | 適用条件 |
|---|---|
Provided |
明示的な支持内容と識別可能な根拠位置がある |
Partially provided |
解析上必要な情報の一部だけが支持される |
Not provided |
関連資料を確認したが、該当項目を特定できない |
Unclear |
関連記載はあるが、意味を一意に決定できない |
Inconsistent |
提供資料間で記載が矛盾する |
Cannot assess |
必要資料が未提供、読取不能または確認範囲外である |
Not applicable |
非該当であることが資料または試験デザインから支持される |
Not providedは、その情報が試験に存在しないという意味ではありません。確認した資料の範囲で特定できなかったことを意味します。Not applicableは根拠なしに使用しません。Not providedとCannot assessでは、原則としてDocument-supported
contentを空欄にします。
出力スキーマ:二つの標準出力
M11SEMANTIC_MAP.md
ai_project/ai_output/m11semantic/M11SEMANTIC_MAP.md
分析上重要な項目ごとに、文書によって支持された内容、根拠、状態、未解決事項を整理します。これは意味情報のマップであり、承認済みSAPやデータ仕様書の代わりではありません。
Semantic
mapの主要表は、Item、Document-supported content、Evidence、Statusの4列で構成します。
M11SEMANTIC_QC_SUMMARY.md
ai_project/qc/m11semantic/M11SEMANTIC_QC_SUMMARY.md
確認範囲、Rコード作成への準備状況、領域別QC、対応が必要な問題、ユーザーの意思決定事項、AIによる仮定リスク、次工程への引き渡しを記録します。
QC summaryは次の8セクションで構成します。
- Review target
- Readiness for R coding
- Domain-level QC summary
- Issues requiring attention
- User decisions required
- AI assumption risks
- Recommended next step
-
QC_STATUS.mdupdate note
Issues requiring
attention表には、ID、Issue type、Severity、Item、Evidence、Analysis impact、Required resolutionを含めます。候補解釈はこの表に記録し、semantic
mapの文書支持内容へ混入させません。
Rコード作成への準備状況
| 状態 | 意味 |
|---|---|
| Ready | 重要な意味情報が根拠付きで整理され、重大な未解決事項がない |
| Partially ready | 限定した作業には進めるが、重要な不足が残る |
| Not ready | 研究固有の推測なしに実装できない |
| Cannot assess | 必要資料またはデータ構造が不足して判断できない |
意味情報が整理されても、データ上の列名、型、コード、行単位が不明であれば、Rコード作成には進めません。
判定例
Item: Endpoint
Document-supported content: Week 24の眼軸長のベースラインからの変化量
Evidence: Protocol 8.2.1; CRF AL_FORM; data_definition.xlsx AL_BL, AL_W24
Status: Partially provided
Issue type: Ambiguous
Severity: Major
Analysis impact: 左右眼の選択規則がなく、解析単位と導出を一意に決定できない。
Required resolution: 解析眼の選択規則を統計担当者が確定する。
SAP QCとの関係
M11 SEMANTIC QCは、複数資料から意味情報を整理します。SAP
QCは、SAPの統計仕様と実装可能性を確認します。意味情報の整理が複雑な試験では、M11
SEMANTIC QCの出力をSAP作成またはSAP
QCの入力として利用できます。ただし、M11SEMANTIC_MAP.mdがなければSAP
QCを実施できないわけではありません。