Coffee and Research
  • Home
  • cifmodeling
  • A Conversation (EN)
    • Index
    • Study design
    • Frequentist Thinking
  • A Conversation (JP)
    • Index
    • Study Design
    • Frequentist Thinking
    • Frequentist Experiments
    • Effects and Time
  • 8 Elements (EN)
  • 8 Elements (JP)

On this page

  • Publish a Paper IV − A Morning Just Before Submission
    • That was the morning before submission.

A Morning Just Before Submission

Published

December 13, 2025

Publish a Paper IV − A Morning Just Before Submission


梅雨の雨音は、夜の静けさをなぐさめてくれる。診療の後、私たちはパソコンに向かう時間をとることが多い。今夜も私は、モニターに映る原稿を眺めていた。

机の上には、論文と調査票が無造作に散らばっている。 紙ナプキンに書かれたメモのそばに、ルービックキューブがそっと置かれている。冷めかけたコーヒーに手を伸ばした。

書いては止まり、 止まっては、また戻る。

「背景」

論文の冒頭に置かれるこのセクションでは、多くの論文が著者名とともに引用される。それはきっと私と同じ空間で書かれたものだ。

「本研究の目的は―」

こんなに短い一文に、こんなにも多くの意味が乗ることを、今の私は知っている。

目的は、個人のものじゃない。研究仮説というフォーマットで、普遍的に共有できるように開かれていなければならない。それは私がどの地点から世界を眺め、どんな方向へ歩こうとしているのかを、そっと誰かに手渡すような行為だ。

次に目が留まる。

「方法」

一番時間が掛かった節だ。自分がこれまで行ってきたことを文章にすればいいだけなのに、知らない誰かに、一から正しく伝えることは難しい。当然と思って見落としていたことを補わなければならない。共有され、一意に決まる言葉を選ぶ必要もある。

書いては直し、読み返しては直す。この時間を、私はきらいではない。

「本研究の主な結果は―」

そこに置かれた数字も、以前とは違って見えた。数字は、患者さんに何が起きたかを記録したもの。同時に、世界への問いかけに返ってきた答えでもある。

私たちは、よい診療をしてきたのだろうか。 問い方が変われば、返ってくる数字も変わる。 並んでいるだけに見える数字は、実は多くを語っている。そのことを今では知っている。患者さんを対象にした研究だからこそ、仮説には医療の価値観が滲む。それは「正しいかどうかを知る」というより、「よりよい技術に近づくための知識を得る」という態度に近い。

たくさんのことが、仕事をしている間や、誰かとおしゃべりをしているときには、通り過ぎてしまう。ひとりになると、それがよくわかる。

コーヒーの水面が、窓の外の雨に合わせるようにかすかに揺れていた。モニターには、書き上げたばかりの結論が映っている。調査をデザインしたときに抱いていた疑問に、答えられているか。ひとつひとつ確かめる。

私は軽く頷き、 ゆっくりとキーボードを叩いた。

Acknowledgements ― We are grateful to an anonymous statistician for thoughtful advice.

That was the morning before submission.