表1と表2は、がん患者100人のランダム化臨床試験を想定して作った数値例です。表1では100人全体における死亡リスクを、表2はステージIIIの50人とステージIVの50人に層別した死亡リスクを示しています。
まず、抗がん剤投与群の死亡リスクをみてください。ステージIIIでは死亡リスクは20%と低く、ステージIVでは40%と高いことがわかります。そして全体の死亡リスクは、ステージIIIとステージIVの平均(30%)です。このように、リスクには、層別する前の値が、層別した後の平均になるという性質があります。
これを踏まえて、リスク比、リスク差、オッズ比の性質を考えてみましょう。表1と表2を比べると、リスク比はすべて0.50倍です。このように、層別する前後でリスク比が変化しないことは、治療効果を測るために好ましい性質です。なぜなら、ステージIIIでリスクが半分になり、ステージIVでも半分になるなら、2つの層を合計してもリスクが半分になってほしいからです。リスク差は、2つのリスクの差をとったものです。したがって、リスクと同じように層別する前の値が、層別した後の平均になります。層ごとのリスク差が等しければ(この数値例ではそうなっていませんが)、層別前のリスク差も、層別後のリスク差と同じ値になるはずです。リスク差とリスク比の持つこの性質を、併合可能性(collapsibility)と呼んでいます。
一方で、オッズ比は層の併合可能性を持たないことが知られています。表1と表2において、オッズ比は0.29倍、0.38倍、0.17倍と変化していますよね。